神の光 2022年12月号巻頭言 安穏を祈り

今年も早師走の声を聴く。振り返れば三年にわたる新型コロナウイルスの感染の波が、押し寄せては引きつつも高止まりの傾向にあり、年末年始にかけて第八波の感染拡大が懸念されている。また、ロシアの侵略によるウクライナ戦争も一向に止む気配がなく、敵対した東西双方の経済的制裁などから起こる負の影響は甚大で、世界的規模の食料やエネルギーの危機が生じて物価は高騰、庶民の生活を足元から脅(おびや)かしている。平和、だれもが望むことだが、為政者(いせいしゃ)の独裁志向、専横的な政治姿勢によってはいとも簡単に崩れて、平和の脆弱(ぜいじゃく)さが露呈している。


教祖さまのお言葉に「一天四海(いってんしかい)みな兄弟」とある。一天四海とは全世界の意であり、親神から生み出された命であれば、みな同胞(はらから)となる。この世で何が尊く大切か、と問われれば、「命」に優るものなしだが、しかし、今日も無辜(むこ)の命が戦争・暴力によって失われているかと思うと心が痛む。命を奪う権利など誰一人この世には存在しないのに。

「天下泰平・普く人助け」は教祖さまのご本願で立教の精神である。明治七年九月のこと、「世情は暗闇、子供(弟子)の心はくずれ、巡査には追われ、我家内は一和せず。何れを見ても下山いたす法はなし。大切な弟子の心がくずれては、是を頼るという道はなし」と命を賭(と)した二十一日間の富士入定修行に入ると、その七日目に大きな転機がおとずれる。夢うつつの中、心に巣食う尺取り虫に化けた恨(うら)み、辛(つら)みの虫を祓い、やがて大悟して平和を希求する確固とした思いに至る。そしてまた、「天下泰平」を下から読ませて「兵隊勝てん」と仰せられ、外にも「争えば我がいるところ更になし」と暴力をとことん否定し憂(うれ)いている。独裁者の孤立した立場を見ると一目瞭然、疑心暗鬼にかられ猜疑心(さいぎしん)に苛(さいな)まれてはいないだろうか。神前で唱える「天明海天」の祈りは、信ずる心。親神と自分とを結ぶ感謝の言葉であるとともに、同時に、「天下泰平」即ち万人全ての救いを祈る言葉でもある。世界が混沌(こんとん)としている今、天明海天の御神言を唱える時、教祖さまのご精神にならって、戦争の終結と人民安穏を心して祈りたいものだ。